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2011年6月

2011年6月18日 (土)

(23.6.18) 文学入門 山口仲美 日本語の歴史

                          2011.6.15
  
   ポピュラーな「日本語」史
                       ―山口仲美『日本語の歴史』を読んで

                                  河村 義人

 もしも自分が外国人で何の因果か日本語を学ぶハメになったとしたら、さぞかし大変だったろうと思われる。まず覚えるものが、ひらがな、カタカナ、漢字と3種類もあり、漢字にいたっては、音読み、訓読みと何通りも読み方があるのだから、たまったものじゃない。おまけに文法も「骨格」というよりは「大風呂敷」みたいで独特だし、中には敬語なんてものもあって、尊敬語、謙譲語、丁寧語と複雑極まりない。日本人である以上、そんな曖昧で七面倒くさい日本語を外国語として覚える必要がない――そう思えば、自分が日本人であることにつくづく感謝したくなる。
 山口仲美『日本語の歴史』(岩波新書)は、そんな日本語を客観的に捉えようとする上で役に立つ一冊だと思われる。

 本書の執筆意図
 本書は文字通り「日本語の歴史」について書かれた本だが、日本語学者である著者の執筆意図は明確である。「日本語の歴史についての専門的な知識は相当蓄積されているにもかかわらず、一般の人に向かって発信された本が出版されていない」ため、「一般の人に興味を持ってもらえる形で、日本語の歴史を語りたい」というものだ。(P.6)
 それだけではない。著者には、さらに具体的な執筆意図があった。

① 日本語の歴史に関する専門的な知識を分かりやすく魅力的に語ること
② できる限り、日本語の変化を生み出す原因にまで思いを及ぼし、「なるほど」と思ってもらえること
③ 現代語の背後にある長い歴史の営みを知ってもらうことによって、日本語の将来を考える手がかりにしうること

 以上、3点である。意図とは、目的のことだ。目的は達成するためにある。本書の目的は、はたして達成されただろうか。

 回りくどい説明はNG
 とはいえ、執筆意図の①から③までを順を追って検証してゆくのはいささか面倒なので、ここでは大雑把な感想を記すにとどめる。
 第Ⅲ章の「うつりゆく古代語」では、ひたすら「係り結び」の消滅という現象を追っているが、用例が多すぎてウンザリし、「係り結びなんてどうでもいいよ」と言いそうになった。「係り結び」というのは、平安貴族のひらがな中心の言葉を象徴しており、その貴族階級の没落が「係り結びの消失」という事態に重なっている、と簡単に言ってくれれば良さそうなものを、あれやこれやと回りくどく説明するもんだから、「それが『専門的な知識を分かりやすく』ということかねえ」と皮肉のひとつも言いたくなる。

 面白い点もある
 さりとて、ひとつ勉強になった話もなかったわけではない。現代の仮名の発音が62音(清音44、濁音18)あるのに対し、奈良時代の万葉仮名は88音(清音61、濁音27)もあったこと(P.35)。「ひらがな文」に対する「漢字カタカナ交じり文」の優位性(P.85,86)。三遊亭円朝の語り口が言文一致体の手本になったこと(P.193)等々。とりわけ面白いと感じたのは、「がっしがっしと歩み」「むんずとつかんで」「捨ててンげり」といった「武者詞(むしゃことば)」。「討たせ」「射させて」といった使役を使った「負け惜しみ表現」も愛嬌がある。面白いと言えば、「しょーべー(商売)はでーく(大工)だと?」「なげー(長い)なめー(名前)だなー」「ふてーやろーだ」といった落語に残る「江戸語」も面白い。

 ありがたい「言文一致体」
 それにしても、ありがたいのは明治以降に確立した言文一致体だ。話すように書くので、誰でも自在に書けるという点がいい。「主観的に断言したい時は『だ』を連発し、語りかけたい時は『です』や『ます』を使い、客観的に述べたい時は『である』を使うというぐあいに」(P.207)表現上、様々なバリエーションがあるのもいい。話し言葉のようにそれらをミックスさせることで、文章に「書き手の呼吸のリズム(=個性)」が現れるというのだから、こんな結構な話はない。
 巨大地震や大津波や原発事故が起きるケンノンな時代だが、言語環境という面において、われわれ日本人は過去最高の黄金時代を迎えていると言えるだろう。そのメリットを享受し、駄文を書き散らすことで「個性」とやらを存分に発揮してゆきたいものである。(了)

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2011年6月 4日 (土)

第2回おゆみ野の森総会資料 その2

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第2回おゆみ野の森総会資料 その1

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