散策 苅田郷

(19.6.29)苅田郷(かったごう)

 京成電鉄おゆみ野駅の南に、緑区刈田子(かりたご)町と呼ばれる一画がある。
 おゆみ野が近代的な都市空間だとすると、古き良き日本をそのまま残している異空間で、その中でも「苅田郷(かったごう)」(注1参照)と呼ばれる、「古民具工芸の村」は特に異彩を放っている。

 不思議な場所と言ったほうが良い。
 農家の一角にギャラリーがある。 約200年前の蔵を改造した「凌雲堂(りょううんどう)」という蔵がギャラリーになっており、古い陶磁器や絵画が展示されている。
 それに続く蔵には農家が使用していた農機具類が、所狭しと置かれている。
 すべて、販売品であるが、オーナーのT氏によると
古美術の目利きが来たときは売れるが、普段はあまり売れない。昔の名のない職人の仕事の価値を認めてくれればいい」と淡々とした表情で話していた。

 どう見ても、販売目的よりも、こうした古美術を展示して人に見てもらうことを楽しんでいる風情だ。
 蔵の横には陶芸教室が開催されているが、ここに通っている娘によると「ほとんど資材の原価以上の費用は取らず、自由気ままに作陶ができる」のだそうだ。

 T氏は、なんとも不思議な人物だ。自宅の一角をギャラリーや作陶教室に開放して、特に収益を上げようとせず平然としている。奇特な人としかいいようがない。

 私は以前から面識があるのであえて聞いてみた。
HP(ホームページ)を作って、もっと宣伝すれば、多くの観光客が来るのではないですか
駄目だね、そんなことすれば私と家内二人でやっているのに、飯を食う時間もなくなってしまう。このあたりの人が口コミで少しづつ来てくれるくらいがちょうどいい
 どうやら欲の世界とは関係ない人のようだ。

 ここ、おゆみ野のそばに、このような場所が存在すること自体不思議としか言いようがない。
 古い日本があり、その古い日本を懸命に守っている人がいる。

 ホームページもないし、道しるべの看板もない。道は曲がりくねって分かりにくい。ここに行くには先だちに連れて行ってもらうしかないという、なんとも古い日本の様式どおりだ。

 今回は苅田郷とその周辺の写真です。
http://picasaweb.google.co.jp/yamazakijirou/oPiZYK?authkey=YGwzVVWttqU

(注1)もともとこの土地は、長野の苅田郷(かったごう)からの落ち武者が、この地に移り住んで永住したとの言い伝えがあり、それが変化して現在の「刈田子(かりたご)」に変わったと言う。
 当、古民具工芸の村は、自分たちのルーツを明確にするため、あえて昔の苅田郷(かったごう)の名前を使用しているのだと言う。

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