(19.7.12)吸血鬼 亀ゴン
先日、「陸ガメ王亀ゴン」という、シートン動物記の「狼王ロボ」を凌駕する作品を作ったのだが、意外と亀ゴンから不評をかった。
亀ゴンから言わせると、「陸ガメ王は狼王と違い、車寅次郎にそっくりで、放送大学の優等生としては到底認めがたい作品だ」と言うのだ。
「どのようなイメージならばいいのかい」
「威厳があり、人がひれ伏す怖さが必要だ。車寅次郎は絶対に駄目だ」
仕方がない。亀ゴンのために第2作を作ることにした。
威厳と怖さの象徴のような「吸血鬼 亀ゴン」に登場してもらうことにした。
「吸血鬼 亀ゴン」
トランシルヴァニアのドラキュラ伯爵にとって、由々しき問題が発生していた。ドラキュラ伯爵は処女の生血を吸うことで、その若さを保っていたのだが、過疎化が進み、トランシルヴァニアの村々から処女がいなくなってしまった。
残ったのは老人ばかりになり、ドラキュラ伯爵は老婆の生血を吸うたびに、老いさらばいてしまい、すっかり生血を吸うことがいやになった。
「もう、ばあちゃんの生血はいやだ。これからは菜食主義者になる」
ドラキュラ伯爵は有機農法をはじめ、城のあちこちに菜園を造り、新鮮なトマトや野菜を食べて幸せな日々をおくっていたが、このことにいたく憤慨している集団がいた。
ドラキュラ組合である。
「このままでは、トランシルヴァニアから恐怖と威厳が消える。何とか手をうたねば」
数度の慎重な協議を重ねた結果、亀ゴンをトランシルヴァニアの地に送ることにした。
なにしろ亀ゴンは「陸ガメ王 亀ゴン」であほ扱いされてしまったために、「威厳と恐怖」の再評価を得ようと起死回生のチャンスを狙っていたからである。
「威厳と恐怖をトランシルヴァニアの地に与えよ」
亀ゴンはドラキュラ組合の最後の切り札だった。
亀ゴンが颯爽とトランシルヴァニアの地に向かったのは言うまでもない。さっそく「威厳と恐怖」を示すために処女を探したが、あいにく人間の処女は皆無だった。
「仕方ない、こうなれば亀の処女の生血を吸おう」
トランシルヴァニアの亀社会は恐怖のどん底に落ちた。すべての処女亀が、亀ゴンの餌食になり、吸血亀に変わってしまったからである。
亀ゴンは得意の絶頂にあった。
「見よ、亀社会は振るえおののいている」
しかし、ドラキュラ組合には不満が鬱積していた。
亀社会の恐怖とは別に、人間社会は菜食主義者のドラキュラ伯爵の下で、平穏で幸福な日々を過ごしていたからである。
そこで、ドラキュラ組合から亀ゴンに第2の指令が発せられた。
「人間の中で、亀という字を名前に使用しているものの生血を吸え」
再び、人間社会には恐怖の只中に追い込まれた。亀ゴンが指令を忠実に実行したからである。
恐怖に駆られた、亀雄や亀太郎や亀子は競って市役所に駆け込み、名前の変更処理を依頼した。
「早く、名前を亀子から花子に変えて」悲鳴と怒号が飛び交った。
しかし不幸は重なるものだ。市役所のコンピュータは名寄せが十分に行われていなかったため、5000万件の未登録の名前があった。
このため、名前の変更処理ができなかったのだ。
その間、亀雄や亀太郎や亀子は亀ゴンの餌食になり、亀の吸血鬼のオンパレードになってしまった。
こうして、再び人間社会は恐怖の只中に追い込まれ、ドラキュラ組合の期待どおり、亀ゴンは威厳を回復したと言う。
どうだろうか。これで亀ゴンの「威厳と恐怖」が保たれたと思うのだが。
なお、このブログと関連する記事は以下のとおり。<a (陸ガメ王 亀ゴン)
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