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(19.4.15)シナリオ 友よ風に向かって走れ(その7)

このシナリオシナリオ1からの続きです。恐縮ですが、シナリオ1・2・3・4・5・6を読んでいない人は1・2・3・4・5・6から読み始めてください。

○ 火曜日新宿支店支店長室(早朝)

  上原取締役より、関支店長に電話がはいる。
取締役(電話)「君のところの、山崎君、すぐに私のところにつれてきなさい。それに相談があるので、君と山崎君の上司も一緒にくるように」
支店長(電話)「あっ、はい、分かりました。すぐにまいります」
  あわてふためく支店長。関支店長は、水谷課長を電話で呼びつける。あわてて支店長室に入ってくる水谷課長。蒼白になっている支店長
支店長「(ぐちっぽく)えぇ-、実にまずいことになったね。上原取締役に直々によびつけられたよ。いや、じつにまずい」
課長「はあ?」
支店長「(怒鳴る)はあ-じゃないでしょ、倒産の件にきまってるでしょ。何かいい策、考えられない?君ね、君も支店長、直前の人でしょ。対応策はありませんなんて取締役に言える」

課長「(意を決して)支店長、勿論支店長と私の責任は免れません」
支店長「そんなことは言われなくとも自覚してます」
課長「しかし、われわれだけの責任といえるでしょうか」
支店長「なんだ、もったいぶらずに早く言いなさい」
課長「この件は、元はといえば、あの山崎が、マラソンなんかしていたからです。倒産が判明した日も、山崎は青梅マラソンに出ていました。第一の責任は、あの山崎にあります」

支店長「君ね、そんなこといったって、山崎はたんなる担当だよ。それにマラソンといったって休日にしてるんだよ」
課長「支店長、今は、我々の首がかかっています。いままで支店長は何年間、当行のために働いてきたのですか。その間、一度たりとも、自分のために、自由な時間を持ちましたか。ところが、あの山崎は・・・・・その結果がこれです。支店長は山崎と心中するきですか(脅迫する)」

支店長「じゃ、ど、どうすればいい?(気弱く)」
課長「私に案があります。山崎に始末書をださせましょう。山崎から自主的に退職願いを出してくれば最高です。責任の所在がはっきりします」
支店長「そりゃ、ちょっと・・・・・私だっていざとなったら支店長やめるぐらいの気持ちあるんだよ(見栄をはるように)」
課長「(支店長の気持ちをみすかして)それはなりません。当行の将来を考えれば支店長は当行になくてはならない人材です」
  店長はしぶしぶ頷く(ほとんど泣きそう)。
  
○ 新宿支店応接室(午後)

  水谷課長と山崎次郎の二人。水谷課長が山崎に始末書を出すように、盛んに説得している。

課長「いいかね、倒産が発生したとき担当者がいないなんてことある。えっ-、マラソンなんかしていたじゃないか。おかげで当行はいくら、損したと思う。5億だよ、5億(だんだん声が大きくなる)。本来はすぐにでも辞表を書く立場なんだ(机をたたく)」

山崎「倒産時、家に居なかったのは、事実ですが、休みでしたし、すべてが私の責任ということは、ないとおもいます」
課長「何を馬鹿なことをいっているんだ(気色ばむ)。すべてお前のせいだ。ひ、昼休み、どうしてる。マラソンして、いないじゃないか。そういうところが責任感がないというんだ。まったく・・・!」

山崎「お言葉ですが、課長にも管理責任があります。第一、K物産に融資拡大策とったのは課長です(声が大きくなる)」
課長「なんだ、なんだ、なんだ。責任を私に転化するのか!始末書ですましてやろうと思ったが、もう、勘弁ならない。す、すぐ退職願いをかきなさい。本来なら首、首! 自主退職は支店長の慈悲だ(完全に冷静さを失う)」
山崎「辞めるつもりはありません(断固として)」
課長「何をいうか!いいか、1日、1日待ってやる。それで辞表、書かなかったらこっちも考えがある」
  山崎と水谷課長のにらみあい。

○ 再び応接室

  今度は、水谷課長は久子を呼びつけ、山崎を説得させようとしている。
課長「斉藤君、最近君は、山崎君と大変仲がいいようだね。はためには犬と猫。どうかんがえても不似合いだね(優しげに)」
久子「それがどうかしました?(平然と)」
課長「いや、いやそれはどうでもいいんだ・・・・・。ところで君は総合職になる希望はないかね。大卒で頭脳明晰、今まで総合職にならなかった方がおかしいね(久子の顔を除きこむ)」
久子「急に私に対する評価が上がったみたいですね(皮肉ぽく)」

課長「いや、いや、私は前から君をたかく評価してたのです。どうです、望んでたんでしょ(じっと目を覗き込む)」
久子「で、私に何をしてほしいのですか」
課長「イヤ、イヤ、これは参りましたね。実は山崎君、今、彼の立場は非常に微妙なんです」
久子「微妙と、いいますと?」
課長「K物産の倒産、知ってますね。彼、倒産時に青梅マラソンにでていたでしょう。私が自宅待機するようにいってあったの、無視して。これ業務命令違反ですよ」

  窓外の新宿御苑を見ている久子
課長「審査部長は、いや激怒しましてね。悪いことに、上原取締役の耳にも入って・・・・支店長は解雇ではあまりに可愛そうなので、なんとか始末書でかたをつけようと・・・・・」
久子「課長が自分で言われたらいかがですか。私が言うことではありません」
課長「勿論しました。彼、でもいこじになって・・・」
久子「とうぜんでしょ」
課長「だから、だから君が必要なのです。彼に潔く始末書を書いて、責任とるようにいってくれませんか、ねっ、頼みます。このとおり」
  水谷課長、おおげさに、手をついて頼む。

○ S喫茶店(同日、夕刻)

  山崎が久子にことの経緯を説明している。外は暗い。

山崎「課長が始末書を書くか、退職しろというんだ・・・・・・」
久子「君、マラソンのしすぎで、頭よくないよ。課長、私を買収しようとしたんだよ。その代わり、君に始末書、書かせろだってさ! どうしてだと思う?」
山崎「・・・・・・」
久子「倒産の前、課長、K物産とゴルフしてたじゃない。投資信託5千万
してもらったと自慢しでしょ。そのあとだよ、5億、無担保で融資したの。課長の責任だよ」
山崎「・・・・・・」
久子「課長、このままでは首さ。だから君に責任転化したい訳さ・・、課長の考えそうなことじゃん・・・・、責任とることないよ」

  沈黙がながれる。外をじっと見ている次郎。雪が降り出している。ようやく口を開く。

山崎「課長には会社しかないんだ・・、たまたま試合中に倒産がおこったけど・・・僕は、試合のほうを大事にしてよかったと思ってる。でも課長の気持ちわかるんだ。出世だけが生きがいなんだから・・・・・それに僕と違って家族もいるし・・・・」

久子「気がいいね。わらっちゃうよ。課長に同情か? で、どうする?」
山崎「うん、ここはひとつ男になってやるか。高倉健みたいにさ。会社を止めよう。金はどうにかなるよ。それに僕のランナーの命、あと8年がいいとこだしな」
久子「(じっと目を見つめ)よし、気にいった。僕は、君のコーチだから、一緒にやめよう。君をオリンピックに出してやるよ。優勝賞金で食っていくか」

  互いに笑い、手でハイタッチをする。
山崎「コーチ、次の目標はなんですか」
久子「きまってるだろ、次はフルマラソンさ。優勝させる。新人の登竜門、別大マラソンにでる」
山崎「分かった、アイアイサー」
 微笑みながら互いにVサイン。

○ 上原取締役の専用役員室(翌日、午前)

  関支店長がことの次第を上原取締役に説明にきている。水谷課長も同席

取締役「なぜ山崎君は、こないの? 私は山崎君に用があるんだよ」
支店長「お聞きおよびのこととはおもいますがK物産の倒産し、山崎はその責任をとりまして、本日退職願いを出してきました。山崎は担当でありながら、K物産が倒産した日に、なんと青梅マラソンなんかにでていまして・・・」

  上原取締役が言葉を遮る。
取締役「待ちなさい。君たちはここに何しにきたのかね(語気強く)」
支店長「えっ・・・勿論K物産の倒産の件について、取締役に説明にまいりまして・」
取締役「君は何をいっとるのかね。倒産の所管は審査部長だよ、私の管轄じゃない。それに青梅マラソンなんかとはなんですか(怒りだす)」
支店長「はぁー?(怪訝な顔をする)」
取締役「いいですか、山崎君は青梅マラソンに優勝したんです。頭取も大変お喜びになり、正式に陸上部の設立を許してくれたのです。山崎君はうちのエースです。わが社の野口みずきじゃないか(強い口調で)」
支店長・・・・・・
取締役「それに責任は上司がとるもので部下がとるものじゃない。見苦しいことはするな。辞職願いはすぐに破棄しなさい。さあ、山崎をここにつれてきて(大声で)」
支店長「あっ、はい」
  支店長と水谷課長は真っ青、口も聞けない。部屋を飛び出す支店長と課長

○ 神宮外苑コース(同日、午後)

語り「僕はこの日から本格的に練習にとりくんだ。気合も入っている。すごく気分はいい」

  風がつよく、砂ぼこりがまっている。走る山崎。久子は自転車。そこに関支店長と水谷課長が汗をかきかきやって来る。
支店長「山崎君、ちょっと、ちょっと止まってくれないか。是非話があるんだ(喘ぎながら)」
山崎「今練習中です。走りながら聞きましょう(呼吸は乱れない)」
  無視して走る山崎。追いかける支店長と課長
久子「支店長、邪魔よ、邪魔!話は後で。辞めたんだから、文句ないでしょ」
支店長「いや、それがあるんだ。止まってくれ(悲鳴をあげる)」
    山崎と久子がようやく立ち止まる。怪訝な顔。
山崎「どうしたんですか支店長。もう僕は退職したんですよ。斉藤君もそうです」
支店長「いや、そのことで話があるんです。ここではなんだから、あすこに支店長車があるでしょ。すまんが、そこまで来てほしい」
山崎「いま練習中だから、困るなあ、少しだけですよ。斉藤コーチ、あなたも、来てください。(支店長に向かって)コーチも行っていいでしょ」
支店長「あぁ、コ-チ?(久子の顔を見る)。えぇ、構いませんよ(やや不満げに)」

○ 支店長車の中

  黒塗りの支店長車。後ろの座席に支店長、山崎、久子。前の座席に水谷課長。
支店長「山崎君、すべて誤解だった。すまん、なにもいわず、会社にもどってくれ。ねっ」
  怪訝な顔の山崎
久子「おかしいじゃない。倒産の兆候見抜けなかった責任とって辞職しろっていってたのに」
支店長「いや、それは、だから誤解だといったでしょ!山崎君、私も支店長だ。倒産の責任はすべて私がとる。それよか君にはいい報せがあるんだよ。実はこんど当行でも陸上部つくることになってね(顔をじっと見る)・・・・、君、君はそこのキャプテンになるんです」
久子「私達、会社を止めました。もう、そんな話、聞く必要ありません」
支店長「(怒って)君にいってるんじゃない、山崎君にいってるんだ。ねっ、帰ってきてくれたまえ」
山崎「そんなこと急にいわれても・・・コーチと相談させてください」
支店長「えっ、コーチ?コーチね。あっ、斉藤君のこと? ねぇ、斉藤君、頼みますよ」
久子「お断りします、支店長。私達二人でオリンピックにでる練習してるんです」
  支店長、狼狽する。


支店長「山崎君、頼む、二人で戻ってくれ(哀願口調)」
山崎「(ニコニコしながら久子を見て)仕方無い、コーチ、また高倉健になるか」
久子「(ぴしゃりと)なにいってんの。駄目だよ。いいかい、スポーツはハングリーでなきゃ勝てないよ。君が青梅で勝ったのも落ちこぼれで、マラソン以外とりえが無かったからじゃないか。すぱっと断りな」
山崎「(むっとして)いくらなんでも、マラソン以外とりえがないは言いすぎだ」
久子「事実は、事実だよ。悟りな」
山崎「なんだい、どうしてそんな言い方するんだ。僕にも自尊心がある」
久子「ふん、くだらない。そんなもの犬にくれてやれ」
  思わず怒りで身を乗り出す山崎。無視して横をむいている久子。

支店長「まあ、まあ、山崎君、これからすぐに取締役のところにいこう。それに、斉藤君、君も機嫌をなおして、いつしょに、ね!」
久子「いえ、お断りします。いく理由がありません。失礼!」
  ドアーを自分でさっとあけて車から降りる久子。振り向きもせず、車から離れていく。気にして後ろ姿を目でおっている山崎。その山崎の肩に手をかけ促す支店長。

支店長「いや、さっ、気にせず取締役のところにいきましょう。(運転手に向かって)ほら、早く車をだして、大手町だよ」
  まだ、気にして斉藤久子の後ろ姿を追っている山崎。走りだす自動車。とうざかる久子。
久子「なんだい、冗談じゃないよ。なにが高倉健だ。ふとった豚になるのか、馬鹿やろう(目に涙)」

○ 上原取締役の応接室(夕刻)

  上原取締役が上機嫌で山崎を迎える。あわてて入ってくる支店長、課長、山崎

取締役「いや、山崎君、君をまっとったよ。青梅マラソン、見ましたよ、いや、いや、実に素晴らしい健闘だった。頭取もことのほかお喜びになって、陸上部の創設をお認め下さってね。監督はね、W大の川口君をくどいたんだ。まあ、金も相応にかかったけどね。ワハハハハ、えっと、ところで君のコーチのなんとかいった女性は一緒じゃないの?」
支店長「(おどおどと)はぁ、あのー、彼女は、この案に反対とかで、来ませんでした」
取締役「(意外な顔で)ほう、そう。いや、気にすることはない。川口君は、今の日本のコーチ陣のなかでは最高の人材だから。まあ、かえってよかったんじゃない。女なんかに口出しされるよりはね」
山崎「(むっとして)斉藤君は最高のコーチです」
取締役「アハハハハ、そうでしたね。分かってます、分かってます。ところでと、今、ちょうど当行が専属契約している女優の伊藤京子がきててね。いま頭取と『頭取と語る』を録画中なんだ。頭取から、山崎君、君もくるようにいわれてるんだ。さあ、いこう。(支店長に向かって)支店長、君達はもう帰っていい」
  山崎の肩を抱くようにかかえる取締役。おずおずと出ていく支店長と課長

○ 頭取の応接室

  壁にフランス印象派の高価な絵。ゆったりとしたソファー。頭取、伊藤京子、フィリッピンからの研修生イザベラ(24)が対談している。ディレクターが指示をとばし、カメラマンが盛んにVTRを回している。ライトが強く光っている。

頭取 「ちょっと、ちょっと、まって! ちょうどいいところに山崎君がきた。山崎君、君もこの対談にはいりなさい。いや、そんなに緊張することはない。ここにいるのは、わが社の専属のイメ-ジキャラクタ-、伊藤京子君だ。君もファンじゃないのかね。それと、そっちがフィリッピンからの技術研修生イザベラ君、女性だが、国立マニラ銀行の秀才。さあ、さあ、そこに座りなさい」
山崎「あのー、僕はなにをすればいいんですか」
頭取「ハハハ、何も心配することはない。私が質問するから、それに答えればいい。ただし何をいっているのかさっぱり分からんのはだめだ。じゃ、はじめていいよ」
  伊藤京子の横に座る山崎。動きだすVTR

伊藤「そうしますと、もうすこし具体的にA銀行が実施しようとしている民間援助の内容について説明してください(台本を読みながら)」
頭取「いま、わが社が最も力をいれて取り組んでいるプロジェクトは、フィリッピンの中央銀行である国立マニラ銀行に対する、技術支援でしょう。貸出、預金、為替等の基礎的業務からはじまって、オンラインに
 よる決済業務まで、全般にわたって技術支援をしています。ここにいるイザベラさんはそのためにわが社に長期技術研修にきているわけです(イザベラの方を見る)」
伊藤「それでは今度はイザベラさんにうかがいますが、日本の銀行業務についてどのような感想をお持ちですか(台本をみながら)」

イザベラ「なにもかも驚くことばかりです。私の任務は国立マニラ銀行が採用するソフトについて事前によく勉強することですが、フィリッピンはお金がないので、私のA銀行への派遣もODAの費用が日本政府からでています・・・・・・・」
  じっと感心してきいている山崎。突然話題が山崎にうつる。

頭取「ところで山崎君、君はこのたび青梅マラソンで優勝したわけだが、世界の強豪アコネンを破ったその実力はどのようにしてみにつけたのかね?」
山崎「(当惑しながら)はあ、アコネンを破ったといっても、アコネンは転倒して若干ペ-スを崩したので、半分はフロックのようなところもあります。ただ、僕としてもそれなりに満足のいくトレーニングはつんできました。特に、白馬岳の高地トレーニングと、筑波での風対策は有効だったとおもいます」 

 モンタージュ
 雨の中を走る山崎。高台から双眼鏡でじっと見ている久子。久子の頬にあたる氷雨、乱れる髪。

 モンタ-ジュ
  筑波大学でのと風圧トレ-ニング。前傾姿勢で歯をくいしばる山崎。満足げに見ている久子


伊藤「(時計をみながら)ではこのへんで今月の頭取と語るを終了いたします」   

                 (明日に続く) 

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