(19.3.29)落日燃ゆ おゆみ野の広田弘毅
「落日燃ゆ」は先日鬼籍に入られた城山三郎氏の名著である。主人公は広田弘毅で、戦前首相まで勤め上げたが、東京裁判で死刑になった。
著者はこの広田弘毅を「国際協調に尽力し、軍部の独走を必死に食い止めようとした、自己弁明をしない高貴な人物」として描いている。
私などは戦後教育の最盛期に育ったものだから、戦前の政治家や軍人はみんな好戦家で、広田弘毅もその一人だと思っていたので意外な感じがした。
実はこのおゆみ野界隈で「落日を燃やしている」人物がいる。私と同じ定年退職者であるが、炎のように燃えている。落日の前のひと時の炎などといってはいけない。落日であると悟ったがゆえに燃えているのだ。
その人は「都川源流の自然再生をはかる会」の責任者 I 氏である。 現在 I 氏は都川源流の里山で二日とおかず遊歩道の整備にいそしんでいる。
従来、ここは私しか入ることのない里山で、私は木に巻きついた蔓(つる)と笹薮を切り開くだけで汲々としていた。見ればわかるが、とりあえず切ったという状況だった。
信じられないことに、そこに I 氏は美しい遊歩道を作ってしまったのである。写真を見てほしい。鎌で笹を根元から切り倒し、切り倒した笹は横に積み重ね、落ち葉だけの遊歩道になったときは、心底驚いた。しかも道を適度に迂回させて、入り口から水辺に通じるように道の設計までしている。
ここは今まで、マムシと狸が生息していたいわば動物の結界のような場所である。ここを将来地域住民や小学生が自由に遊べる自然とのふれあいの場にするのが I 氏の夢になっている。
「山崎さん、ここはいいですね。鶯は鳴いているし、実に静かだ。第一気持ちがいい」
私もここが特別に空気のおいしい場所であることを知っていたので、大いに同意した。回りが木々に囲われているため、住宅地の真ん中にあるのに、深い森林にいるように空気がおいしい。森林浴ができる。
しかし、私には心配がある。ここはマムシの生息地だ。遊歩道が整備されると人が入ってきてマムシにかまれないとは限らない。もうすぐ春だ。
「入り口に《マムシ注意》 の張り紙はしておいた方がいいのじゃないかな」と I 氏に提案した。
それにしてもここはいい場所だ。不法投棄されたゴミが片付けられ、この都川源流一帯に遊歩道が整備されれば、おゆみ野地区で最高の自然と触れ合える場所になる。なにしろマムシや狸とも触れ合えるのだからすごい。
「今日は、嬉しいことがありました。春蘭を二株見つけました」と道造りにいそしむ I 氏から報告があった。実に風流な人だ。
風流の はじめや里の 蘭の春
芭蕉をまねた。
4月からは、県のエコリーダも参加して、本格的な整備も始まる。I 氏は人工的でない、自然のままのふれあいの場にするのだというビジョンを持っている。I 氏ならやり遂げるだろう。
私も及ばずながら協力することにした。
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